紳士靴ウレタンソール その①

ごらんのように崩れてしまい、ソールが丸ごと剥がれてしまいました。原因は【加水分解】です。

【加水分解】・・・読んで字のごとく。の症状です。

このウレタン底、軽くて弾力性、柔軟性がありスニーカー感覚で履ける(実際多くのスニーカーやウォーキングシューズでも使用させてます)という長所がありますがこのように崩れる、割れる、また接着がききづらいという短所もあります。

見聞きしている範囲ですが、【加水分解】はウレタン底にはいつかやってくる宿命のようです。

かれこれ15年ほど前でしょうか?某有名メーカーのプレミアムスニーカーが1足、10万円以上!…なんて事がありました。
当時のスニーカー達…少なからず、時間が経った現在にこの状態になっているという話を耳にいたします。
いわゆるコレクターの方達が大事に保管されていても、どうにも避けられない症状だという事ではないでしょうか?

また修理店に持ち込まれる多くのお客様は「冠婚葬祭で履こうと思ったら・・・。」とか「久々に履いたら・・・。」と言われる方がほとんどなのです。
聞けば、皆さん「下駄箱に仕舞いっぱなしで・・・。」とお話いただきます。

実は…この管理状態が1番の加水分解の原因なのです。
湿気の多い玄関の風通しのない下駄箱内は革、ゴム等を含め特にウレタンにとっては最悪な環境なのです。

個人的な意見ですが…

【下駄箱】…あげ足を取るようでありますが、下駄はまだしも靴には確実に良くない環境だと思います。

ではどうしたら良いか?

答えは、とにかく靴は履いてあげてください。特にウレタン底の靴は運動を与え呼吸をさせてあげてください。
それが延命手段になると思います。


今回、お持ち込みになられた靴は【紳士スポンジオールソール¥8400】にて対応させていただきました。

残念ながら現在の修理業界では同素材のウレタンでの修理は不可能です。(婦人ピンリフトを除く)
このスポンジ素材はウレタンよりは多少重いのですが、スニーカー感覚という意味では限りなく近いのです。

正直、私も未だ一見しただけでは「ウレタン?スポンジ?TR(合成樹脂)?」と頭を抱えることはしばしばです。
なぜならば、スポンジをウレタンコーティングしてあったり、TRに革が巻いてあったりと外見判断がつかないものが多々存在するからです。。
(以前に勉強済みの靴。また素材を削る、もしくは燃やせば判明いたしますが。。。)

今回のご説明で興味を持たれた方は…
お買い求め時、ある程度のメーカー物で出所がしっかりしている靴であればお店で素材をお尋ねいただくと良いと思います。
但し、お店に熱心な販売員さんがいらっしゃる場合やカタログデータ等があれば即答が可能と思われますが
メーカー等にお問い合わせとなると、多くの男性がお休みの日曜日はメーカーがお休み・・・となりますので要注意です。

今回の【スポンジオールソール】
今後【崩れず安易に修理可能な靴】に生まれ変わらせてあげる事が1番の醍醐味ではないでしょうか?!

紳士靴ウレタンソール その②

参考までに同じ症状の靴です。。。(粉々になってしまってましたが・・・)

私はこうやって「なおりますか?」とお持込になられるお客様もいらっしゃる現状に、今一度【靴】を見つめなおすべきだとひしひしと感じております。